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発電所

飯舘電力千葉訓道さんに聞く、設立の経緯とこれからの復興

今年からみんな電力の「顔の見える電力」に加わった飯舘電力。今回は、取締役の千葉訓道(のりみち)さんにお話をお聞きしました。

 

 

飯舘電力が入るビルには福島復興に尽力する団体が数多く入る。

 

震災当時の状況を教えて下さい。 

 当時、私は外資系企業に勤め最後の20年間は単身赴任でした。3月11日は私の誕生日を孫に祝ってもらうため、東京から福島市内の妻の実家へと戻っていました。偶然にもあの大変な日に家族と一緒に居られたことで「そろそろ家族の元に帰れ」と言われているように感じました。

 実は、その後すぐに飯舘電力を立ち上げた訳ではなく、復興に役立つ仕事を探す中で土湯温泉の元旅館経営者の方と出会い、2012年に二人で地熱発電会社を立ち上げました。温泉熱で電気を作る「バイナリー発電」です。

 

バイナリー発電設備

 

 

 発電の経験はゼロでしたが、様々な方面の関係者の支援の下どうにか着工まで辿り着きました。そして、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也さんの紹介で、前年に会津電力を立ち上げていた大和川酒造9代目の佐藤弥右衛門が声を掛けてくれました。2014年9月、私と佐藤そして飯舘村の畜産家である小林稔などで「村民の村民による村民のための会社」を会社理念として飯舘電力を立ち上げました。現在では、村民を中心に70名以上の出資、20名以上の寄付を受け、65名以上の地権者が経営に参加しています。

 

飯舘電力の皆さん

 

 

 会社設立当初は、地権者の合意を得て1.5MW太陽光発電所(メガソーラー)を建設する予定でしたが、東北電力が突然送電線との接続を保留することを発表しました。その頃は、全国的に太陽光発電設備が急激に増加している時期でした。

 

 

その後、メガソーラーから小規模低圧太陽光発電所へとシフトする。

  福島原発事故後、飯舘村は全村避難を余儀なくされました。広大な農地がありながらも、放射線で汚染された土地で作ったものは、基準をクリアしているとしても簡単には売れないでしょう。村内で作られた作物は現在でも、ごく一部の例外を除いて出荷することが出来ません。

 

道の駅にて

 

 

 では、その土地で発電を行い、電気を売れば良いのではないか。使えない農地の有効活用になると思いました。

 

 

美しい自然が残る飯舘村

 

 4年ほど前に、市民エネルギーちば合同会社の東光弘代表から、営農型太陽光発電所(ソーラーシェアリング)を教えて頂きました。ソーラーパネルで発電し、同時にその下の農地では様々な作物を栽培するといった新しい農業モデルです。震災前は農業を主な生業としてきた飯舘村なので、避難解除後の復興支援策の有力な一つとして挑戦することにしました。当初は許認可(農地法など)の高い壁が立ちはだかりましたが、一時農地転用との条件で建設許可を受けました。

 

営農型発電設備(ソーラーシェアリング)

 

 2015年3月に低圧太陽光発電所が稼働しました。現在では43か所で稼働し、そのうち4割がソーラーシェアリングです。

 

飯舘電力の目指す復興の形とは 

 舘村は「牛の村」でした。震災前は237戸の畜産農家が3,000頭以上の飯舘牛を育てていました。飯舘電力の設立理念を一言でいえば「社会的企業(ソーシャルカンパニー)を目指す!」です。即ち、固定価格買取制度(FIT)で長期保証された売電利益を資金にして、住民と一緒に復興に向けた問題解決を行える会社でありたいと考えます。

 

 

飯舘牛

 

 現在、村では飯舘牛復活に挑戦する畜産家が複数いらっしゃいます。順調にいけば近い将来出荷が開始されますが、万が一、畜産家にとって採算が取れない価格が付いた場合、挑戦者のやる気を削ぐことにもなります。そこで弊社は複数の挑戦者と契約し、作物は牧草に限定し、そのすべての営農作業は売電利益の中から日当を支払う代わりにお任せし、収穫した牧草は無償(または廉価)で提供することを始めました。肥育期間中に必要な牧草経費を抑えることにより事業採算性改善の一助にしてもらいます。

 

村内には放射線量を測定するモニタリングポストが設置されている。

 

 その他、雇用創出として太陽光発電所の建設やメンテナンスなども村民に委託しています。従って、出資者、寄付者、土地賃借、役員参加などを含めると、150名以上の方々と一緒に地域が抱える問題解決に挑戦していると自負しています。

 

今年の3月11日で震災から8年が経ちました。 

 都会から来た人は「もう8年経った」と復興している姿を期待してやって来るけれど、6年間全村避難状態にあったこの村は、その間復旧は続いたが復興は凍結されていたため、一昨年避難解除され「やっとゆっくりと復興が始まったばかり」だと言えます。

 

除染土を保管するフレコンバック置き場が村内に点在する。

 

 現在、村内の道路沿いに看板を出したり、村内至る所に竣工実績が増えてきたため、うちの土地も使って欲しい。という問い合わせを多く頂いています。来年3月までに発電所の数は60基まで増える見込みです。 

 

道路沿いに立つ飯舘電力の看板

 

 

2017年8月にオープンした飯舘村の道の駅、までい館。

 

 

 

中では飯舘村の特産である花と明るい笑顔が迎えてくれる。

 

 

 

福島市内を流れる阿武隈川を背にして

 

おわりに 

飯舘電力の設立理念にある会社の「存在意義」は、

 

  大切な故郷を自らの手で守る

  自立復興の「証」を作る

 

 

 当たり前の営みを取り戻す作業は、つい今しがた始まったばかりだ。

 

道の駅にて

 

飯舘電力ホームページ

http://iitatepower.jp/index.html

 

飯舘電力が運営する動画サイト きぼうチャンネル

https://www.youtube.com/channel/UCWST5Usjbg6WNkS3J94_E_Q

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