環境教育プロジェクト
幼稚園もパワーシフト!あけぼの学園さまインタビュー
子どもたちにどういう地球を残したいか?どのような素質を持ってもらいたいか?
そこに立ち返って選択をしています。
学校法人あけぼの学園 安家 周一(あけ しゅういち)様
―なぜ再生可能エネルギーに切り替えようと思われたのですか?
長い間幼稚園を運営していますが、もともとエネルギーだけでなく食の問題に関心がありました。幼稚園はお弁当を持参することが多い中、あけぼの学園は60年以上前から国産の食材を使い手作りの給食を提供しています。
3年ほど前に参加したシンポジウムで、環境脳神経科学情報センター代表の黒田洋一郎氏から、農薬や除草剤と子どもの発達障害(自閉症)の関係について話を聞きました。日本で売られている野菜は農薬が使われていて、田んぼの米もベトナム戦争で使われた枯葉剤の材料になっている猛毒の除草剤が使われています。米の中には残留があるので、小さい頃から食べている私たちは体や脳へ影響があり、障がいを持つということを知りました。OECD諸国の中で韓国の次に日本が除草剤などの使用が多く、障がいを持つ子どもも多いため関係していることが明らかでした。日本は敗戦後、除草剤が大量に入った小麦やパンなどが、アメリカから送られてきていた歴史があり、そのような食料政策になってしまいました。日本はEUなどに比べても圧倒的に農薬使用量が多いのです。
「国産だから安全」と思っていた自責もあり徹底的に排除していこうと決め、農薬を使っていない農家から食材を仕入れたり、塩など調味料も含め添加物を使わないものを探したりと取り組んでいます。
エネルギーについては、契約している電力会社の汚職問題などから他の電力会社へ変えたいと思っていました。ですが当初は電力会社が選べるのかを知りませんでした。そのような時、自由学園で教師をしている同級生から、学校の電力を再エネに切り替えるチャレンジをして学園内で再エネの勉強をしたという話を聞き、そして送電と売電が別になっていることを知りました。
まずは自宅からと思い、オンラインで手続きをしたら15分くらいでき、切り替えは簡単でした。自宅の電力を切り替えた時に価格が少し下がったということもあり、再エネが他の電力より高いわけではないことがわかりました。そして傘下の8つの施設を全部再エネに切り替えようという話になりました。
―初めから園の電力を切り替える、ということには不安があったのですか?
みんな電力のホームページを見た時に色んな人が発電していることが分かりました。ですが園の電力を切り替えるには、光熱水費の予算や安定供給などが心配でした。電気の質も分からないので、その不安を払拭するためにまずは自分の家で実践してみました。
乳幼児期の教育が私たちの仕事です。乳幼児期は文字が書けるかどうかではなく、非認知能力という優しさや自制心、粘り強さなどの力の醸成がこの時期に行われます。前頭葉が遊びによって耕され、我慢する力、強調する気持ちが育ちます。この時期には遊びこむことが大切です。
子どもの未来を考えた時に、そのような子どもの成長に影響を及ぼす農薬や除草剤、原子力に頼らないエネルギーを応援することがどれだけ大切かということ、持続可能な社会を実現するために教育があるということを、ことあるごとに保護者の皆さんへお話しています。8施設の電力を切り替えた時にも皆さんへ「みんな電力」の再エネを使うことにしたとお伝えしました。興味を持っていただくために、啓発をできるだけしていきたいと思っています。
―再エネへ切り替えたことについて保護者の方々からお声を頂くことはありましたか?
皆さんのご家庭が再エネに切り替えているかどうかはわかりません。ですが石炭や石油、天然ガス、原子力ではないやり方を選択してほしいと伝えています。農薬を使っていない農家を選べばそういった農家が育つ。そういった感覚で皆さんが選択することで、子どもたちが幸せな生活を送れる基盤に寄与するということを発信するようにしています。
栃木県の西那須で幼稚園を運営している友人がいます。原発事故で汚染されましたが、福島県との県境ぎりぎりのため政府から補助がありませんでした。そこに住む人たちの多くが、北海道や関西に避難しましたが、友人は園を続けたいと、園庭の土をショベルカーで掘り返して山に捨てるということをやっていました。もう裏山にキノコを採りに行くことはできません。
子どもの命を守ること、その先に生きていく社会が、良い社会として担保されるための教育をしていますが、エネルギーもその一環です。
―切り替えて良かったことはありましたか?
従業員に対して、切り替えの時に想いをしっかり話しました。一部は自宅の電気についても考えたようです。保護者の皆さんへもお話しているので、波及効果はあると思っています。あとはリクルート。園の採用の時に食材やエネルギーのことをアピールしています。響く人と関係ないと思う人、色々いると思いますが、意識的に考えて生活している人に対しては興味を惹かれるのかなと思います。再エネだから就職希望だという人はいませんが、一つの要素として影響すると思っています。
あと、40数年間、通園バスを使っていましたが、3年前にバスをやめると宣言して、昨年から廃止しました。通園バスは結局、子どもを箱の中に入れて排気ガスを出して、事故もあり、親と手をつないで歩くことが少なくなるから、教育と反対側だったということに気づきました。子どもたちにどういう地球を残したいか?どのような素質を持ってもらいたいか?そこに立ち返って選択をしています。
学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
写真提供:学校法人あけぼの学園